実家の商店、友人が営むカフェ、近所の整骨院。身近な小さなお店から「SNSとか、どうしたらいいかな」と相談された経験はないでしょうか。会社でマーケティングや営業、企画に関わっている人なら、その知識は、地域の小さなお店にとって心強い助けになります。そして、それは副業の入り口にもなり得ます。
この記事では、中小企業や個人商店のマーケティングを手伝うときに、何から手をつければよいのかを、実践の順番で整理します。売上の向上を約束するものではありません。お店ごとに事情は大きく異なるため、ここでの内容は、考え方の一例として読んでください。
まずはお店の「今」を一緒に見る
大企業のマーケティングと、小さなお店のマーケティングの大きな違いは、使える時間とお金が限られていることです。そのため、最初にやるべきなのは、新しい施策を提案することではなく、今の状況を一緒に把握することです。
聞いておきたいのは、次のようなことです。
- お客さんはどんな人が多いか(年代、住んでいる場所、来店のきっかけ)
- よく売れている商品やサービスは何か
- お客さんは、どうやってお店を知ったのか
- 今、どんな発信をしているか(看板、チラシ、SNS、地図サービスのお店の情報など)
- 店主が使える時間は、週にどのくらいあるか
特に最後の質問は重要です。どれだけ良い施策でも、店主が続けられなければ意味がありません。週に30分しか使えないなら、その30分でできることを考えます。
お客さんのことは、店主の感覚だけでなく、実際の声で確かめると精度が上がります。レジの横に簡単なアンケートを置く、常連さんに「最初にどうやって知りましたか」と聞いてもらう。それだけでも、思い込みとのズレが見えてくることがあります。
競合となる近くのお店の発信も、一緒に眺めてみましょう。真似をするためではなく、自分のお店にしかない強みを言葉にするためです。
最初に整えるのは「見つけてもらう場所」
多くの小さなお店にとって、効果を見込みやすいのは、すでにお客さんが探しに来ている場所の情報を整えることです。地図サービスのお店の情報が、その代表例です。
営業時間、定休日、電話番号、写真、メニューや料金。こうした基本情報が古いままになっていたり、写真が少なかったりするお店は、意外と多いものです。情報を正確にし、写真を増やすだけでも、お客さんがお店を選ぶ判断材料は増えます。お店の情報の管理方法は、各サービスの公式ヘルプで確認してください。
口コミへの返信も大切です。良い口コミにはお礼を、厳しい口コミには丁寧な対応を。返信の文面に悩む店主のために、いくつかの型を一緒に作っておくと、続けやすくなります。なお、お店側が口コミを依頼する際に、見返りを約束して好意的な投稿をお願いするといった方法は、表示のルールや各サービスの規約に反するおそれがあります。各サービスのガイドラインと、消費者庁のステルスマーケティングに関する情報を確認しておきましょう。
SNSとチラシは「続けられる形」で
SNSは、毎日投稿しなければと考えると、すぐに負担になります。週に1〜2回、「今週のおすすめ」「新商品」「お休みのお知らせ」など、型を決めて投稿するだけでも十分です。写真の撮り方や、投稿文の型を一緒に作り、店主が自分で続けられるようにするのが、手伝う側の役割です。
地域のお店の場合、チラシやポスティング、店頭の黒板といった、オフラインの発信が効果的なこともあります。デジタルにこだわらず、お客さんの層に合わせて方法を選びましょう。
チラシやSNSで使う写真や文章は、お店が自由に使えるものにしておきます。他の人が撮った写真や、ネット上の画像を勝手に使うことはできません。手伝う側が作ったものの権利をどうするかも、最初に決めておきましょう。
施策を始めたら、効果を確かめる仕組みも用意します。チラシに「このチラシを見せると〇〇」という一言を入れる、来店時に何を見て来たかを聞く。小さなお店では、高度な分析よりも、こうした素朴な確認のほうが役立つことが多いものです。
手伝いを「仕事」にするときの約束ごと
知り合いのお店を手伝う場合、無償のつもりが、いつの間にか作業が増えて負担になることがあります。お金をいただくかどうかに関わらず、何をどこまで手伝うのかを、最初に話し合っておきましょう。
報酬を受け取る場合は、作業の範囲、期間、金額、支払いの時期を、簡単な文書にしておくと安心です。相手が事業者で、こちらが個人として仕事を受ける場合、取引の条件の明示など、フリーランス・事業者間取引適正化等法の考え方も参考になります。
また、勤務先の取引先や競合となるお店を手伝う場合は、就業規則や利益相反の問題がないかを、事前に確認してください。
小さなお店のマーケティングは、派手な施策より、地道な積み重ねがものを言います。一緒にお店の今を見て、続けられる小さな改善を重ねていく。その伴走こそが、会社員が持つ知識の、一番のいかし方なのかもしれません。