マーケティングの勉強を始めると、海外の著名なマーケターの名前に何度も出会います。ジェイ・エイブラハムをはじめ、ダイレクトレスポンスと呼ばれる分野の古典は、今も多くの人に読まれ、引用されています。高額な教材として紹介されることもありますが、その根っこにある考え方の多くは、書籍や公開されている講演などでも触れることができます。
この記事では、そうした古典的なマーケティングの考え方のうち、副業で小さな商売をする会社員にも役立ちそうな要点を、私なりに整理して紹介します。特定の教材を推薦するものではなく、また、これらの考え方を使えば売上が上がることを約束するものでもありません。人物や書籍の内容について詳しく知りたい場合は、原典にあたってください。
「売上を伸ばす3つの方向」という考え方
ジェイ・エイブラハムの考え方としてよく紹介されるものに、事業の売上を伸ばす方法は、大きく分けて3つしかない、というものがあります。
- お客さんの数を増やす
- 1回あたりの購入金額を上げる
- 購入の回数を増やす
当たり前に聞こえるかもしれません。けれど、副業で何かを売っている人の多くは、1つ目の「お客さんの数を増やす」ことばかりに目が向きがちです。SNSのフォロワーを増やそう、新しいお客さんに届けようと。
ところが、すでに買ってくれたお客さんにもう一度選んでもらうことや、より満足度の高い組み合わせを提案することは、新しいお客さんを見つけるより、手間が少なく済むこともあります。たとえば、ハンドメイド作品を買ってくれた人に、季節ごとの新作を知らせる。Webライティングの単発の依頼をくれた人に、月ごとの継続の形を提案する。3つの方向を意識するだけで、打ち手の幅は広がります。
実際に、自分の副業を3つの方向で点検してみると、意外な発見があります。ノートに3つの欄を作り、それぞれについて「今やっていること」と「まだやっていないこと」を書き出してみてください。過去のお客さんに一度も連絡していない、組み合わせの提案をしたことがない。そんな空白が見つかれば、そこが次に試す候補になります。
ただし、2つ目や3つ目を、押し売りと取り違えてはいけません。お客さんにとって本当に役立つものを提案する場合にだけ、意味のある方法です。
「お客さんの役に立つ」ことを最優先に置く
古典的なマーケティングの考え方の中で、繰り返し語られるのが、「売り手の都合ではなく、お客さんの利益を最優先にする」という姿勢です。ジェイ・エイブラハムの場合、これは「卓越性の戦略」などの名前で紹介されることがあります。
この考え方の要点は、自分を「売る人」ではなく、お客さんにとっての「信頼できる助言者」と位置づけることです。お客さんの状況をよく聞き、その人にとって最善の選択肢を示す。ときには、自分の商品が合わないなら、そう伝えることもある。そうした姿勢が、長い目で見たときの信頼と、紹介や継続につながる、という考え方です。
副業の規模で考えると、これはとても実践的な話です。少数のお客さんと丁寧に向き合える個人だからこそ、一人ひとりの状況に合った提案ができます。大きな会社にはできない強みとも言えるでしょう。
具体的には、申し込みの前に相手の目的を聞く、合わない場合は他の選択肢を伝える、購入後に困っていないかを確認する、といった行動に落とし込めます。
ダイレクトレスポンスの分野では、もう一つ、「反応を測って改善する」という考え方も重視されます。広告や案内文を出したら、どれだけの人が反応したかを数え、文面や見せ方を少しずつ変えて比べる。副業でも、販売ページの見出しを変えてみる、案内メールの件名を変えてみるなど、小さな比較はすぐに始められます。思い込みではなく、お客さんの反応から学ぶ姿勢です。
古典を読むときに気をつけたいこと
古典的なマーケティングの書籍や教材には、今の日本では使えない表現や手法が含まれていることもあります。書かれた時代や国の、法律や商習慣が違うからです。
たとえば、強い言葉で煽る広告の文面や、「今だけ」「残りわずか」といった表現は、事実に基づかない場合、景品表示法上の問題になる可能性があります。また、オンラインで販売する場合は、特定商取引法に基づく表示や、最終確認画面での表示の義務もあります。海外の手法をそのまま真似するのではなく、考え方だけを取り入れ、具体的な表現は日本のルールに合わせる必要があります。
もう一つ気をつけたいのは、高額な教材やセミナーの勧誘です。「この教材で人生が変わる」「今申し込まないと損をする」といった勧誘には、慎重になりましょう。古典の要点の多くは、図書館や書店で手に入る書籍からも学べます。契約トラブルに巻き込まれた場合は、消費者ホットライン(188)で相談できます。
古典の価値は、テクニックではなく、時代を超えて通用する考え方にあります。お客さんの数、購入の金額、購入の回数という3つの方向を意識し、お客さんの役に立つことを最優先に置き、反応を見ながら改善する。副業の小さな商売にこそ、その考え方は素直に当てはまるはずです。