「この記事、AIで書きました?」。クラウドソーシングで記事を納品したあと、依頼主からこう聞かれて言葉に詰まる。AIを使った副業では、こうした場面が実際に起こり得ます。問題はAIを使ったこと自体より、使い方と伝え方を決めていなかったことです。
生成AIで文章や資料、画像を作る副業は、作業時間を短くできる可能性がある一方、品質と権利の両面で落とし穴があります。この記事では、引き受ける前・作る途中・納品のときの3段階に分けて、会社員が押さえておきたい判断の基準を整理します。どの程度の収入になるかは案件や単価、本人のスキル次第なので、ここでは触れません。
引き受ける前:AI利用の可否を必ず確認する
最初の分かれ道は、依頼主やサービスがAIの利用をどう扱っているかです。案件の募集文に「AI使用不可」「AI利用は事前に申告」と書かれていることもあれば、何も書かれていないこともあります。
書かれていない場合は、応募や受注の段階で一言確認するのが安全です。たとえば次のような聞き方なら、角が立ちません。
「構成案づくりや表現の見直しに生成AIを補助的に使うことがありますが、問題ないでしょうか。事実確認と最終的な執筆は私が行います。」
あわせて、利用しているクラウドソーシングやスキル販売サービスのガイドラインも読んでおきます。AI生成物の扱いを個別に定めているサービスもあるため、規約に反する出品や納品をしてしまうと、アカウントの利用に影響が出るおそれがあります。
確認の結果、AIの利用を断られることもあります。その場合は、無理に隠して使うのではなく、AIなしで対応できる案件か、改めて見積もりを考え直すのが筋です。最初にはっきりさせておけば、納品後に揉める心配はぐっと減ります。また、やり取りはサービス内のメッセージで行い、合意した内容が記録に残るようにしておきましょう。
作る途中:AIに任せる部分と、自分でやる部分を分ける
AIを使った制作で品質が落ちる典型は、出力をほぼそのまま納品するパターンです。もっともらしい誤り、どこかで見たような言い回し、依頼主の意図とずれた構成。こうした問題は、読み返さなければ気づけません。
目安として、次のように役割を分けると、品質を保ちやすくなります。
- AIに任せやすい:見出し案の候補出し、表現の言い換え、長い資料の要約、チェック項目の洗い出し
- 自分でやるべき:事実・数字・固有名詞の確認、構成の最終決定、体験や意見の部分、依頼主のトーンに合わせた仕上げ
事実確認には、思ったより時間がかかります。2000字の記事なら、統計や制度に触れる箇所ごとに公式サイトや公的機関の資料を開いて確かめるだけで、30分程度は見ておくと無理がありません。この時間を見積もりに入れずに単価を決めると、結果的に割に合わなくなります。
画像を作る場合は、生成サービスの規約で商用利用が認められているか、既存の作品やキャラクターに似ていないかの確認も欠かせません。画像の権利まわりは別の記事で詳しく整理しているので、画像を扱う方はあわせて確認してください。
納品するとき:使い方を記録し、聞かれたら答えられるようにする
冒頭の場面で言葉に詰まらないためには、どの作業にAIを使ったかを自分で把握しておくことが一番の備えです。案件ごとに、使ったサービス、使った工程、自分で手を入れた内容をメモしておきます。1案件あたり数行で十分です。
納品時のメッセージに、あらかじめ書き添えておくのも一つの方法です。「構成案の作成に生成AIを補助的に使用し、本文の事実確認と執筆は筆者が行いました」。事前に了承を得ていれば、これだけで依頼主の不安はかなり減ります。
また、文章の場合は、納品前にコピーチェックツールで既存の文章との重複を確認しておくと安心材料になります。ただし、ツールで問題が出なかったからといって、権利上の問題がないと断定できるわけではない点は覚えておいてください。
修正依頼が来たときも同じです。AIで一から作り直すと、前回の良かった部分まで変わってしまうことがあります。指摘された箇所だけを自分で直し、変更点を短く伝えるほうが、依頼主にとっても確認が楽になります。
会社員だからこそ気をつけたいこと
本業との関係では、二つの点に注意が必要です。一つは、会社のパソコンや会社契約のAIツールを副業に使わないこと。もう一つは、本業で知った情報をプロンプトに入れないことです。業界知識を生かした記事は書きやすい反面、社内でしか知り得ない話が混ざりやすくなります。書き終えたら「これは社外の人も知っている情報か」という目で一度読み返してください。
AIは、作業の一部を肩代わりしてくれる道具です。どこまでを任せ、どこから自分が責任を持つのか。その線を案件ごとに引けるかどうかが、AIを使った副業を続けられるかどうかの分かれ目になります。