「相談に乗ってくれてありがとう、すごく助かった」。同僚や友人からこう言われることが多い人は、その力を個人のコンサルティングやコーチングとして提供できるかもしれません。ただ、善意の相談と、お金をいただく仕事の間には、はっきりとした違いがあります。料金を受け取る以上、何を提供し、何を提供しないのかを明確にする責任が生まれるからです。
この記事では、本業のスキルを個人向けのコンサルティングやコーチングとして提供するときの、サービス設計、値付け、集客の考え方を整理します。顧客が集まることや、特定の金額を得られることを約束するものではありません。
サービス設計と値付け:「時間」ではなく「何が変わるか」を売る
最初にやりがちなのが、「1時間〇円で相談に乗ります」という形です。シンプルですが、相談する側にとっては、1時間で何が得られるのかが分かりにくく、申し込みの判断がしにくくなります。
代わりに、「何が変わるか」でサービスを設計します。たとえば、次のような形です。
- 職務経歴書の添削:60分のオンライン面談+面談後3日以内に修正案を送付
- 新任管理職向けの1on1設計:90分×2回で、自分のチームに合った面談の進め方を作る
- 業務改善の相談:事前ヒアリングシート+60分の面談で、改善の優先順位を3つに絞る
こうして内容と成果物を決めておくと、相談する側は自分に必要かどうかを判断しやすくなり、提供する側も、どこまでやればよいかが明確になります。
値付けは、次の3つの観点から考えます。
- かかる時間:準備、面談、事後のまとめまで含めた合計時間
- 提供する価値:相談した人にとって、どれだけの時間や悩みが解決されるか
- 続けられるか:本業と両立しながら、その価格で月に何件まで引き受けられるか
たとえば、1件の添削に、準備30分、面談60分、修正案の作成60分で合計2時間半かかるなら、その時間に見合う価格かどうかを考えます。最初は実績がないため控えめな価格で始め、感想や実績が積み重なってから見直すのが現実的です。ただし、安すぎる価格は、引き受けるほど負担が増え、続けられなくなる原因になります。
支払いのタイミングも決めておきます。面談の前に支払ってもらう前払いにすると、当日のキャンセルや未払いの心配が減ります。キャンセルや日程変更の扱い(何日前までなら無料で変更できるか、など)も、申し込みの前に伝えておくと、お互いに気持ちよくやり取りできます。
契約の内容は、短くても文書にしておきましょう。提供する内容、回数、期間、料金、キャンセルの扱い、守秘義務。これらを申し込み時に確認してもらうだけで、後からの行き違いを大きく減らせます。
コーチングの場合、相談の内容が心の健康に関わることもあります。医療や心理の専門職でない限り、診断や治療に当たることは行わず、必要に応じて専門の窓口や医療機関をすすめる、という線引きを、サービスの説明にも明記しておきましょう。
集客:「相談された経験」を発信に変える
個人のコンサルティングやコーチングで、最初のお客さんになってくれるのは、多くの場合、あなたの考え方や人柄をすでに知っている人です。そのため、集客の中心は、普段の発信になります。
発信のネタは、これまでに受けてきた相談の中にあります。もちろん、相談者が特定される形で書くことはできません。「よくある悩み」と「それに対する考え方」を、一般化して発信します。
発信を見て興味を持った人が、すぐに申し込めるよう、サービスの内容、価格、流れ、申し込み方法をまとめたページを用意しておきます。いきなり有料の相談に申し込むのはハードルが高いので、15分程度の無料の説明の時間を設けるのも一つの方法です。ただし、無料の時間に強い売り込みをすると、かえって信頼を失います。
実際に引き受けたら、終了後に感想をお願いします。感想を発信や販売ページに載せる場合は、本人の許可を得て、内容に手を加えないことが前提です。架空の感想や、効果を誇張した紹介は、景品表示法上の問題にもなり得ます。販売ページには、特定商取引法に基づく表示も必要です。
発信の場所は、一つに絞ったほうが続けやすいでしょう。SNSで短く発信するのか、ブログで考え方を丁寧に書くのか。自分の得意な形を選び、週に1〜2回でも、同じテーマで書き続けることが大切です。書き続けるうちに、「この分野ならこの人」と思い出してもらえるようになっていきます。
会社員が両立するための線引き
本業のスキルを副業で提供するときは、勤務先との関係に特に注意が必要です。本業の取引先や、競合となる会社を顧客にしないこと。本業で知った情報やノウハウのうち、会社に帰属するものを使わないこと。就業規則での副業や競業の扱いも、事前に確認しておきましょう。
また、月に引き受ける件数の上限を決め、面談の時間帯を平日の夜や週末に限定するなど、本業に影響しない枠を作っておきます。個人のコンサルティングやコーチングは、一件ごとの信頼がすべてです。無理に件数を増やすより、一人ひとりに誠実に向き合うことが、紹介や継続の依頼につながっていきます。