広告もSNSのフォロワーもまだ少ない。そんな副業の初期に、最初のお客さんを連れてきてくれるのは、多くの場合「人」です。満足してくれたお客さんの口コミ、知人からの紹介、同じような立場の人との協力。お金をかけずに始められる一方で、やり方を誤ると、信頼を一気に失うこともある方法でもあります。
この記事では、口コミ・紹介・提携(ジョイントベンチャー、JV)という3つの「人を通じた集客」について、会社員が副業で取り組むときの考え方と注意点を整理します。どの方法も、成果が出ることを約束するものではありません。
口コミと紹介:「頼む」前に「話したくなる」状態を作る
口コミや紹介は、頼んで生まれるものではなく、相手が「誰かに話したくなる」ときに自然に生まれるものです。そのために、まず見直したいのは、商品やサービスそのものの体験です。
たとえば、相談サービスなら、相談の後に要点をまとめたメモを送る。テンプレートを販売しているなら、使い方で迷いやすい点の補足を、購入後にそっと届ける。期待を少しだけ上回る体験があると、人はそれを誰かに話したくなります。
逆に、問い合わせへの返信が遅い、約束の期日を守れないといった小さな不満は、良い口コミよりも早く広がることがあります。本業で忙しい時期にも対応できる範囲で、引き受ける数を決めておくことも、口コミを守る工夫の一つです。
そのうえで、紹介をお願いすること自体は悪いことではありません。満足の声をもらったタイミングで、「もし周りに同じことで困っている方がいたら、紹介していただけるとうれしいです」と一言添える程度で十分です。紹介しやすいように、サービスの内容を短くまとめた文章やページのリンクを用意しておくと、相手の手間も減ります。
注意したいのは、謝礼の扱いです。紹介や口コミの投稿に対して、お金や特典などの見返りを提供する場合、その投稿は「広告」としての性質を帯びます。消費者庁のステルスマーケティングに関する考え方では、事業者が表示内容の決定に関与した投稿は、事業者の表示とされる場合があり、その場合は広告であることを明示しなければなりません。見返りを渡して感想を投稿してもらうなら、広告であることが分かる表示を必ずお願いしましょう。実態のない口コミを自分で作ったり、他人に頼んで書いてもらったりするのは論外です。
また、勤務先の同僚や取引先に紹介を頼むのは、断りにくい関係を利用することになりかねません。本業での関係と副業は、きちんと分けておくのが賢明です。
提携(JV):お互いの読者に価値がある組み合わせを探す
ジョイントベンチャーは、異なる強みを持つ人同士が協力して、お互いの読者やお客さんに価値を届ける取り組みです。個人の副業の規模なら、たとえば次のような形が考えられます。
- 共同での無料勉強会:経理の知識がある人と、Excelの時短術を発信している人が、オンラインで一緒に勉強会を開く
- 相互紹介:自分のメールマガジンで相手の記事を紹介し、相手も自分の記事を紹介する
- セット提供:資料作成のテンプレートと、その使い方の個別相談を組み合わせて提供する
提携相手を探すときの基準は、相手の読者の規模ではなく、「お互いの読者にとって、本当に役に立つ組み合わせか」です。読者が重なりすぎていると新しい出会いが生まれにくく、まったく重ならないと紹介しても興味を持ってもらえません。少しだけ重なる関係が、理想に近いといえます。
候補が見つかったら、いきなり大きな企画を持ちかけるのではなく、まずは相手の発信を読み、感想を伝えるなど、関係を作るところから始めます。相手にとってのメリットを先に考え、自分が提供できることを具体的に示して提案すると、話が進みやすくなります。
提携のトラブルを防ぐ「取り決めメモ」
個人同士の提携は、口約束で始まりがちです。しかし、後から「そんなつもりではなかった」という行き違いが起きると、関係そのものが壊れてしまいます。小さな企画でも、次の点を文章にして、お互いに確認しておきましょう。
- それぞれの役割:誰が何を準備し、誰が告知するか
- お金の扱い:売上や費用をどう分けるか、誰がいつ支払うか
- 集めた情報の扱い:参加者の連絡先を、どちらがどの範囲で使えるか
- 表示:相手の商品を紹介するとき、紹介料がある場合はその旨を明示するか
- 終わり方:企画の期間と、途中でやめる場合の扱い
特に3つ目は大切です。参加者が自分の連絡先を誰に渡したつもりなのかを明確にし、同意のない相手にメールを送ることがないようにします。広告や宣伝のメールを送るなら、特定電子メール法のルールも関わります。
人を通じた集客は、時間がかかる方法です。一人の満足したお客さん、一人の信頼できる協力者との関係が、次の出会いを連れてくる。その積み重ねは、広告のようにお金で買えるものではないからこそ、長く続く財産になります。