「自分ブランド」と聞くと、肩書きの立派な人や、SNSで目立つ人の話に思えるかもしれません。けれど、会社員が副業で発信するときに必要なのは、派手さではなく、「この話題なら、この人に聞けば分かりやすい」と思ってもらえる軸です。
この記事では、本業の経験をもとに発信の軸を決める方法を、4つの問いに沿って考えます。軸を決めたからといって、すぐに仕事や収入につながるとは限りません。ただ、軸があることで、何を発信し、何を発信しないかの判断が速くなり、続けやすくなります。
問い1:あなたが「当たり前」にやっていることは何か
発信の軸の候補は、自分では当たり前すぎて価値を感じていないことの中に眠っていることが多いものです。次のような質問に、思いつく限り答えてみてください。所要時間は30分ほどです。
- 同僚や後輩から、よく聞かれることは何か
- 他の人より速く、または楽にこなせている作業は何か
- 前の部署や前職で身につけて、今も役立っている習慣は何か
- 失敗から学んで、やり方を変えたことは何か
たとえば、「会議の資料を前日までに必ず配る習慣」「取引先への謝罪メールを書くのが早い」「新人の育成でつまずいた経験」。こうした一つひとつが、誰かにとっては知りたい情報です。
一人で思い出すのが難しければ、信頼できる同僚や友人に「私が得意そうに見えることは何?」と聞いてみるのも有効です。自分では気づかなかった強みを、他人のほうがよく知っていることは珍しくありません。過去の人事評価のコメントや、感謝のメールを見返すのも手がかりになります。
問い2:それを必要としているのは、どんな人か
候補が出そろったら、それぞれについて「この話を必要としているのは誰か」を具体的に考えます。「会社員全般」では広すぎるので、職種、年次、置かれている状況まで絞ります。
例:「謝罪メールを書くのが早い」なら、「顧客対応の部署に異動したばかりで、クレーム対応のメールに毎回1時間かけている人」。ここまで具体的にすると、その人に向けて何を書けばよいかが見えてきます。その人が一日のどんな場面で困っているのかまで想像できると、さらに書きやすくなります。
複数の候補がある場合は、自分が話していて楽しいもの、5年後も興味を持っていそうなものを選びます。発信は長く続けるものなので、自分が飽きないテーマであることは、思った以上に大切です。
候補を一つに絞り切れないときは、2つまでなら掛け合わせても構いません。「経理×子育て中の時短」「営業×地方在住」のように、組み合わせることで、ほかの発信者とは違う、自分ならではの立ち位置が生まれることもあります。ただし、3つ以上を混ぜると、かえって焦点がぼやけます。
問い3:その人に向けて、何を約束できるか
軸を言葉にするときは、「誰に、何を、どんな形で届けるか」を一文にします。
「顧客対応の部署に来たばかりの人に、クレーム対応のメールを短時間で書くための型と実例を、毎週一つずつ届ける」。
この一文が、プロフィールの説明文や、投稿のテーマを選ぶときの基準になります。この一文から外れる話題は、どれだけ反応が良さそうでも、発信しないと決めておきます。反応が少ない時期が続くと、つい流行りの話題に手を出したくなりますが、そこをこらえることが、軸を育てる第一歩です。軸がぶれると、見る人にとって「何の人なのか」が分かりにくくなるからです。
ここで注意したいのは、約束しすぎないことです。「必ず上達する」「誰でもできる」といった、自分が保証できないことは書きません。自分が実際にやってきたことの範囲で、届けられるものを約束します。
問い4:本業と、どう線を引くか
本業の経験を軸にするからこそ、本業との線引きは慎重に行う必要があります。
- 勤務先や取引先が特定される情報は出さない
- 社内の数字、資料、システムの画面は使わない。例は架空の会社や数字で作り直す
- 就業規則で、副業や社外での発信がどう扱われているかを確認する
- 本業の競合となるような商品やサービスは、提供しない
実名で発信するか、ペンネームにするかも、この段階で決めておきます。実名には信頼を得やすい面がある一方、勤務先との関係や、プライベートとの境界をどう保つかを考える必要があります。どちらが正解というものではないので、自分の状況に合わせて選んでください。後から変えるのは手間がかかるので、最初に決めておくのが無難です。
軸が決まったら、まずは3か月、その軸に沿った発信を続けてみましょう。続けるうちに、反応のある話題とない話題、自分が書きやすい話題と書きにくい話題が見えてきます。そこで軸を少し調整するのは、むしろ自然なことです。自分ブランドは、最初に作り込むものではなく、発信を重ねる中で少しずつ形になっていくものだと考えると、肩の力が抜けるはずです。大切なのは、最初の一文を決めて、その一文に沿って発信を積み重ねることです。