SNSのアカウントが、ある日突然使えなくなったら。フォロワーとのつながりは、そのサービスの上にしか存在しません。メールマガジンやLINEのように、読者と直接つながれる連絡先の一覧(リスト)を持つことが副業で語られるのは、こうした「借り物の場所」への依存を減らすためでもあります。
この記事では、メールマガジンを中心に、読者との関係を育てるリスト運用の考え方と、守るべき法律のルールを整理します。リストの規模や売上は約束できるものではありません。また、具体的な配信サービスの機能や料金は、各サービスの公式情報で確認してください。
まず押さえる法律:特定電子メール法
広告や宣伝を目的とするメールを送るときは、特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)のルールを守る必要があります。総務省の案内などによれば、主なポイントは次のとおりです。
- 原則として、あらかじめ受信に同意した人にだけ送る(オプトイン)
- 同意を得たことを示す記録を保存する
- 送信者の氏名または名称、配信停止の連絡先などを、メールの中に表示する
- 配信停止を求められたら、それ以降は送らない
表示が必要な事項には、ほかに住所や苦情・問い合わせの受付先なども含まれます。個人で副業として配信する場合、住所の表示に抵抗があるかもしれませんが、法律で求められる表示を省くことはできません。配信サービスによっては、表示や配信停止の仕組みをサポートする機能があるので、使う前に確認しておきましょう。詳しくは総務省や消費者庁の資料で確認してください。
登録してもらう理由を、具体的に示す
メールマガジンは、登録してもらうところから始まります。「最新情報をお届けします」だけでは、登録する理由になりません。何が、どのくらいの頻度で届くのかを具体的に示します。
例:「毎週火曜の朝に、経理の仕事が少し楽になるExcelの小技を1つお届けします。配信は5分で読める長さです。いつでも配信停止できます」。
登録のきっかけとして、チェックリストやテンプレートなどの資料を無料で提供する方法もよく使われます。その場合も、資料の中身は登録した人が実際に役立てられるものにし、登録後に何が届くのかを事前に明示しておきます。
登録フォームを置く場所は、ブログの記事の最後、プロフィールページ、SNSのプロフィールのリンク先などが考えられます。どこから登録されたかを把握できるようにしておくと、どの発信が読者とのつながりを生んでいるかが分かります。
配信は「約束した内容を、約束した頻度で」
読者との関係を育てるうえで、いちばん大切なのは一貫性です。登録時に約束した内容と頻度を守ることが、信頼の土台になります。
会社員が無理なく続けるなら、週に1回の配信がひとつの目安です。土曜の午前に1通を書き、予約配信で火曜の朝に届ける。書くことに慣れてきたら、数週間分を書きためておくと、本業が忙しい時期も途切れません。
件名は、中身が一目で分かるものにします。思わせぶりな件名で開封を誘うより、「月末の集計を速くするSUMIFの使い方」のように具体的なほうが、読者は必要なときに見返しやすくなります。
内容は、自分の分野の小さなノウハウ、実践してみた結果、読者からの質問への回答などを中心にします。商品やサービスの案内は、普段の配信で役立つ情報を届けたうえで、時々にとどめます。案内のメールでも、効果を断定するような表現は避けましょう。
数字より「返信」に耳を傾ける
配信サービスによっては、開封やリンクのクリックの数を確認できます。ただ、読者が少ないうちは、数字のわずかな変化から多くを読み取るのは難しいものです。
それより大きな手がかりになるのが、読者からの返信です。「この方法を試してみました」「こういう場合はどうすればいいですか」。返信の一つひとつが、次に書くべき内容のヒントになります。メールの最後に「感想や質問は、このメールに返信してください」と一言添えておくと、返信をもらえる機会が増えます。返信には、できる範囲で丁寧に答えましょう。質問への回答を、本人の了承を得て次の配信で紹介するのも一つの方法です。
配信停止が出ることを恐れる必要はありません。合わない人が離れていくのは自然なことで、残った読者との関係の質のほうが大切です。停止の手続きは、迷わずできるよう分かりやすくしておきましょう。それも読者への誠実さの一つです。
リストは「預かりもの」
読者のメールアドレスは、信頼して預けてもらった情報です。プライバシーポリシーを用意し、取得した目的以外には使わないこと。第三者に渡さないこと。配信サービスのアカウントには二段階認証を設定し、情報の漏えいを防ぐこと。こうした基本を守ることが、リストを育てる前提になります。就業規則での副業の扱いや、収入が出た場合の記録と確定申告も、他の副業と同様に忘れずに確認しておきましょう。