「スマホ一つで、スキマ時間に稼げる」。FX(外国為替証拠金取引)は、そんな言葉とともに、会社員の副業として紹介されることがあります。けれど、私はFXを、副業として気軽にすすめることはできません。この記事では、その理由と、それでもFXに取り組む場合に欠かせないリスク管理の考え方を整理します。
特定の取引手法や業者をすすめるものではなく、利益を約束するものでもありません。FXは、預けたお金以上の損失が出る可能性もある取引です。制度の詳細は、金融庁や国税庁の公式情報で確認してください。
FXを「副業」としてすすめにくい理由
副業の多くは、自分の時間とスキルを使って、何かの価値を提供し、その対価を受け取るものです。働いた分だけ、少なくともゼロ以上の結果が返ってきます。
FXは違います。為替レートの変動を予想して取引する以上、結果がマイナスになることは珍しくありません。しかも、FXにはレバレッジの仕組みがあり、預けた証拠金の何倍もの金額を取引できます。金融庁の案内によると、個人向けの取引では、証拠金は取引額の4%以上(つまり最大25倍)とされています。利益が大きくなる可能性がある一方で、損失も同じように大きくなります。
相場が急に動いた場合、損失が証拠金を上回ることもあります。そのとき、不足分は追加で支払わなければなりません。働いた時間に応じて収入を得る副業と、同じ感覚で考えることはできないのです。
もう一つの理由は、時間です。為替相場は、平日はほぼ24時間動いています。本業の会議中に相場が大きく動けば、対応できません。夜中に値動きが気になって眠れない、仕事中もチャートが頭から離れない。そうなると、本業にも生活にも悪影響が出ます。副業の目的が生活の安定なら、それと逆の方向に働くこともあるのです。
それでも取り組むなら:リスク管理の基本
FXの仕組みを理解した上で、それでも取り組む場合は、次の点を必ず決めておきます。
- 失っても生活に影響しない金額だけを使う:生活費や、近いうちに使う予定のお金は使わない
- レバレッジを低く抑える:上限まで使うのではなく、自分で低めの上限を決める
- 1回の取引で許容する損失額を決める:損失を一定額で確定させる注文(損切り)を、取引と同時に入れておく
- 取引の記録をつける:なぜその取引をしたのか、結果はどうだったかを記録し、振り返る
特に重要なのが、損切りです。損失が出ているときに「そのうち戻るはず」と持ち続けると、損失が膨らみ続けることがあります。あらかじめ決めたルールに従って、機械的に損失を確定させる。これができないなら、FXには向いていないと考えたほうがいいでしょう。
いきなり実際のお金で取引するのではなく、多くの業者が用意しているデモ取引で、仕組みや注文の方法に慣れておくのも一つの方法です。
ただし、デモ取引と実際の取引では、気持ちの持ちようが大きく違います。実際のお金が減っていくのを見たとき、冷静にルールを守れるかどうか。その点も含めて、自分に向いているかを見極めてください。取引の時間帯も、本業に影響しない範囲にあらかじめ限定しておきましょう。
業者選びと詐欺への注意
日本国内の個人を相手にFXの取引を提供する業者は、金融商品取引業の登録が必要です。金融庁の公式サイトでは、登録を受けている業者の一覧を公開しています。取引を始める前に、業者が登録されているかを必ず確認しましょう。
金融庁は、無登録で海外から勧誘を行う業者について、注意を呼びかけ、警告を行った業者名を公表しています。無登録の業者とのトラブルでは、お金が戻ってこない可能性が高くなります。
また、FXに関する詐欺的な勧誘にも注意が必要です。「月利〇%確実」「自動売買ツールで誰でも稼げる」「SNSで知り合った人から投資をすすめられた」。こうした話には、まず疑ってかかりましょう。高額な自動売買ツールや投資の情報商材を巡るトラブルも報告されています。困ったときは、消費者ホットライン(188)や、金融庁の金融サービス利用者相談室に相談できます。
FXの利益と税金
FXで利益が出た場合、税金がかかります。国税庁の案内によると、国内の登録業者との取引で生じた利益は、先物取引に係る雑所得等として、申告分離課税の対象になります。税率は、所得税15%と住民税5%で、これに加えて復興特別所得税がかかります。
一方、無登録の海外業者との取引による利益は、扱いが異なり、総合課税の対象になる場合があります。会社員であっても、FXの利益は確定申告が必要になることが多いため、取引の記録や年間の取引報告書は、必ず保管しておきましょう。
FXは、仕組みを理解し、リスクを管理できる人にとっては、資産運用の手段の一つになり得ます。けれど、副業の収入源として、生活の安定を支えるものにするのは難しい。まずは本業と、自分の時間とスキルを使った副業で、安定した収入の柱を作る。その上で余裕資金の範囲で考える、という順番を大切にしてください。